仕入れ旅日記Vol.8/番外編その6

東南アジアには、本当の名前も住所も、電話番号は愚か、

その素顔さえ中々見ることが出来ないけれど、

誰もが知っていると言うような、強力な権力を握っている人間がいた。

「峠の走り屋を自称している人間に一度走らせて見たいもんだ」

よく言えばワインディングロード、一歩間違えば谷底に転げ落ちる片道300キロの山道を、

ハイラックスサーフの四駆で2時間ちょっとで走り抜ける。

「あ、私は車には強いから酔ったりしないよ」と断った酔い止めを飲んでも、

まるで洗濯機の中にでも放り込まれたかのような、容赦ないスピードであっさりと酔う。

やっとの思いでたどり着いたのは一軒の民家。そこに彼らは居た。

「居た」といっても自分達の家であるはずもなく、

一体いつ、どこから、どんな手段でそこにやってきたのかは誰も知らないし、

その証拠も残さない、まるで幻のような人達に会う事が出来た。

今頃はそれぞれがそれぞれの方法で、目立たないように一般の人に混じり、

どこかの土地へ散っていったことでしょう。

まぁ、そんなディープな一日でした。明日の便でバンコクに戻ります。

3日前に戦闘が終わったばかりという国境沿いの川。

国からの援助目的でのドンパチだけど、そんな場所に立つと良い気分はしない。

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